コミュニケーション障害がある方が就労移行支援を利用する際は、コミュニケーションスキルの訓練が充実している事業所を選び、自分の特性に合ったカリキュラムがあるかを確認することが重要です。就労移行支援とは、障害のある方が一般企業への就職を目指すための通所型福祉サービスであり、就職に向けた準備から就職活動、就職後の定着支援まで一貫したサポートを受けることができます。コミュニケーションに困難を抱えている方にとって、就職活動や職場での人間関係は大きな不安要素となりますが、適切な支援を受けることで自分に合った働き方を見つけ、長く働き続けることは十分に可能です。
本記事では、コミュニケーション障害の基本的な理解から就労移行支援の仕組み、事業所の選び方のポイント、利用手続きの流れまで詳しく解説していきます。就労移行支援を利用して良かったと感じている人は全体の91.0%にのぼり、ほとんどの方が満足しているという調査結果もあります。自分に合った事業所を見つけることで、コミュニケーションスキルを向上させながら自信を持って就職活動に臨むことができるようになります。

コミュニケーション障害とは何か
コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)とは、なんらかの原因により人とのコミュニケーションに困りごとや苦痛が生じる障害です。米精神医学会による「DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル」では、「言葉を使うことに対して障害が発生する複数の疾患の総称」として定義されています。コミュニケーション障害は、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)と同じ「神経発達症群」の中に位置づけられています。
具体的な症状としては、話を組み立てることが難しく会話を続けることが苦手であったり、言葉を思ったように発することができなかったり、意思の疎通がうまくできなかったりするといったものが挙げられます。また、相手の表情や声のトーンから感情を読み取ることが難しい、冗談や比喩表現を字義通りに受け取ってしまう、会話の文脈や空気を読むことが難しいといった特徴も見られます。
なお、インターネット上などでよく使われる「コミュ障」という言葉は、医学的なコミュニケーション障害とは異なります。「コミュ障」とは人付き合いが苦手な人や他人との関わりが苦手な人などを指す俗語(スラング)であり、性格や素質を表す言葉です。医学的な症状のあるコミュニケーション障害とは明確に区別されます。
コミュニケーション障害の5つの種類と特徴
コミュニケーション障害には大きく分けて5つの種類があります。それぞれの特徴を理解することで、自分に合った支援を受けるための参考になります。
言語障害(言語の習得の障害) は、語彙の獲得、文法規則の理解、情報の伝達などが困難な状態を指します。言いたいことを言葉にまとめることが難しかったり、相手の話を理解することに時間がかかったりする特徴があります。
語音障害(話し言葉の障害) は、言葉を発声・発音することが困難な状態です。話す速度やリズムに問題がある場合も含まれ、特定の音を発音することが難しく言葉が不明瞭になることがあります。
小児期発症流暢障害(吃音) は、話し始めの言葉に詰まったり、単語を伸ばしたり、言葉がすらすら出てこないなどの症状があります。緊張する場面や特定の状況で症状が強くなることがあります。
社会的(語用論的)コミュニケーション障害 は、言語を扱う基礎的能力は十分にあるにもかかわらず、社会的状況に応じたコミュニケーションに困難さが生じます。状況や聞き手の要求に合わせてコミュニケーションを変える能力の障害、会話や話術のルールに従うことの困難さ、字義どおりでなかったりあいまいであったりする言葉の意味を理解することの困難さなどが特徴です。
特定不能のコミュニケーション障害 は、症状があるがどのコミュニケーション障害の診断基準も満たさない状態のことを指します。
コミュニケーション障害の原因は多岐にわたりますが、遺伝的要因、発達過程での問題、脳の損傷、聴覚障害などが挙げられます。ただし、現状では原因ははっきりとわかっていないと言われています。社会的コミュニケーション症には、家族に発達障害などのコミュニケーション障害のある方がいる場合も多いという報告もあります。
コミュニケーション障害の治療と改善方法
コミュニケーション障害の5つの分類において、すべてを一律に治療する方法というものはありませんが、種類によっては症状の改善が認められるものもあります。適切なアプローチを知ることで、日常生活や就労に向けた準備を進めることができます。
言語症や語音症に対しては、言語聴覚士などによる言語指導を行うことで症状の改善が認められています。特に語音症は、治療により会話の困難が改善することが多い傾向にある障害です。小児期発症流暢症(吃音)では、その人にとって吃音の症状が出やすい環境を特定し、ストレスや不安がかからないような環境調整や、リラックス法などを通して症状のコントロール方法を学ぶといった治療方法が選択されています。
コミュニケーション能力の改善には、様々なトレーニング方法があります。対話練習セッションでは、実際の会話シナリオを模擬して参加者が異なるコミュニケーションスタイルを試す機会を提供します。ビデオフィードバックを使用して自分の話し方や非言語的な振る舞いを客観的に評価することも有効です。さらに、感情認識トレーニングを通じて表情や声のトーンから他者の感情を読み取る能力を養うことも重要です。
ソーシャルスキルトレーニング(SST) は、日本語では社会技能訓練と呼ばれ、他者とのコミュニケーションを円滑にするためにゲームやロールプレイなどを用いてスキルを習得していくトレーニングです。障害がある場合、精神科クリニックや障害児・障害者施設でトレーニングを受けることができます。発達障害は早期発見・早期療育といわれ、早期のトレーニングほど効果が期待できると言われています。
専門的なプログラムの例として、昭和大学附属烏山病院では2008年より成人期の発達障害専門外来・デイケアを開設し、自閉症スペクトラム(ASD)を中心にプログラムを展開して支援を行っています。このプログラムは大人のASDが持つ知的能力を活かし、対人技能やコミュニケーション技能の向上を補います。またピア・サポートを重視し、集団での実施を推奨しています。茨城県立こころの医療センターでは、いろいろな場面を設定して実際に会話の練習をするプログラムがあり、仕事に必要な身だしなみ・表情・雑談等のコミュニケーションのコツを学ぶことができます。
コミュニケーション障害がある方と仕事の関係
コミュニケーション障害のある人にとって職場での最も大きな困難は、コミュニケーションに関連する業務や人間関係によってストレスを感じやすい点です。職場でのコミュニケーションのプレッシャーや理解されにくいことによる不安、対人関係の問題によるストレスが蓄積しやすく、心理的な負担が大きいとされています。電話応対や会議での発言、雑談など日常的なコミュニケーションが求められる場面で困難を感じることが多くあります。
コミュニケーション障害のある方に向いている職業は、コミュニケーションが少なく自分のペースでできる仕事です。テレワークは自宅で自分のペースで働けるため、コミュニケーション障害の方には向いている働き方と言えます。農業従事者は自然との関わりが深くコミュニケーションよりも土地や作物との関係性が重要です。イラストレーターはコミュニケーション能力よりも芸術的センスや技術が求められ、在宅で自分のペースで働ける魅力のある仕事です。その他にもデータ入力、プログラミング、清掃業務、倉庫作業、ライター、図書館司書などが比較的向いている職種として挙げられます。
職場での配慮と工夫も重要です。障害者職業総合センターでは、職場のコミュニケーションに関して障害者と周囲の間に生じる課題、それを解消するために事業主や本人が行っている配慮や工夫を紹介しています。認知機能に障害のある障害種別への配慮としては、一度に伝える情報量を調整したり伝達内容の分かりやすさに配慮したりするなどの対応がなされます。発達障害のある人が同じ職場の人にあらかじめ自身の特性や傾向、そこからくる得意・不得意を伝えておくと、その人に合った配慮やいいコミュニケーションにつながる可能性が高くなります。
就労移行支援とは何か
就労移行支援事業は、障害のある方の社会参加をサポートするために運営されている通所型の福祉サービスです。一般企業への就職を目指す障害がある方や難病がある方に対し、就職に向けた準備から就職活動、就職後の定着支援まで、さまざまなサポートを提供しています。就労移行支援は「働くための準備」をする場所なので、コミュニケーションが苦手な人でも活用できます。むしろ、対人スキルに不安がある人ほど就労移行支援を活用する価値があります。
就労移行支援の対象は、65歳未満の方、障がいや難病等のある方(身体障がい・知的障がい・精神障がい・発達障がい・難病など)、一般就労を希望されている方、原則離職中であることという条件を満たす方です。障害者手帳を持っていなくても、医師の診断や意見書があれば通所することができます。障害者手帳の有無に関わらず、主治医の診断があれば利用を検討することが可能です。
就労移行支援の利用期間と料金
就労移行支援は利用開始から2年以内という期間で就職することを目指しているため、期間の上限は原則2年と定められています。その後、引き続き受けられる職場に定着するまでケアを受けることができる定着支援は、原則6か月間の期間が別に設定されています。就労移行支援を利用して途中で辞めてまた入り直すという場合は、利用期間をゼロからリセットすることはできません。たとえば期間中1年利用して中断した場合は、残りの1年が再利用可能期間です。就労移行支援期間の2年で就労に結びつかなかった場合は期間を延長することが可能ですが、延長できるかどうかは市町村の審査会によって決定されます。
就労移行支援事業所の利用者が負担する料金は、サービス全体にかかった費用のうち1割で、1日あたりおよそ500円から1,400円となっています。ただし、世帯収入によって月ごとの負担上限額が設定されており、約9割の方が自己負担なし(0円)で利用しています。
世帯収入別の負担上限額については、生活保護受給世帯は0円、市町村民税非課税世帯は0円、収入がおおむね670万円以下の世帯は9,300円、上記以外は37,200円となっています。自己負担額を算定する基準となる前年度の収入とは、利用者本人と配偶者の世帯収入で計算されます。実家で暮らしていても親や兄弟の収入は合算されません。
就労移行支援事業所の利用料金のほかにも、通所している間には交通費や昼食代、資格取得費用など様々な費用がかかります。就労移行支援事業所に通うのにかかる交通費は原則として自己負担となりますが、一部の自治体では一定の基準を満たす場合に交通費の助成対象となることがあります。例えば、神奈川県横浜市では通所にかかる6ヶ月定期券代と片道運賃×通所回数の安いほうを助成、大阪府大阪市では低所得者を対象に月5,000円を上限として1ヶ月の定期代の半額相当を補助、千葉県松戸市では公共交通機関利用で月1万円までの補助があります。
就労移行支援の訓練内容
就労移行支援では「就職するため」「長く働き続けるため」に、様々な就労訓練プログラムが行われます。カリキュラムは「社会スキル」「ビジネススキル」「専門スキル」「就活スキル」が身につくよう構成されています。施設によっても異なりますが、1日4時間から6時間ほどが一般的です。1コマ45分から90分ほどのプログラムを複数回、午前と午後に行うのが一般的です。
ビジネス・PC訓練 では、通常のオフィスを再現したセンターにてパソコン研修や電話受付、ビジネスマナー研修等、必要な知識と能力向上のための訓練を行います。タイピング練習、Word、Excel、PowerPoint、データ入力、ビジネス文書作成等の訓練があり、自分のスキルや状況に合わせて事務作業等で必要なパソコンの基本操作を身に付けます。
コミュニケーション・ソーシャルスキル のプログラムでは、グループワークで他者と関係を結び社会に適応するためのトレーニングを行い、コミュニケーションでは会話のキャッチボールで相手と思いを共有するトレーニングを行います。ロールプレイ(職場での会話を想定した練習)、企業実習(実際の職場環境でコミュニケーションを経験する)などの訓練も行われます。
作業訓練 では、事務系・作業系の二つに分類され、領収書作成やデータ入力、ボールペン組立や計量などの軽作業訓練を行います。職場実習・就職活動サポート では、就労移行支援事業所の内外で職場体験プログラムや現地実習を行います。具体的には就労移行支援事業所内で仮想の職場を設定し様々な業務を行なってみます。業務は事務や軽作業、食品加工、機械製図や清掃などがあり、いろいろな職種を体験することで適性を見つけ出します。
事業所によって提供されるプログラムには特色があります。ココルポートでは500種類以上の訓練メニュー(プログラム)を用意しており、スタッフと相談しながら自分にあったメニューを選ぶことが可能です。マイクロソフトオフィス講座・プログラミング講座など、自己学習用のe-ラーニング講座も用意されています。LITALICOワークスは、一人ひとりに合う「働く」を見つけていけるように、その人の状況や目標、スキルに合わせて取り組むカリキュラムになっています。企業での実習を経験しながら、自分に合う職種や働き方を見つけられるようサポートしています。
就労移行支援事業所の選び方のポイント
就労移行支援事業所は、訓練やプログラムの内容が事業所ごとに異なります。そのため、自分に合った事業所を慎重に選ぶことが重要です。コミュニケーション障害がある方が就労移行支援を効果的に活用するためには、いくつかのポイントを押さえて事業所を選ぶ必要があります。
自分に必要なサポート・カリキュラムがあるかを確認する
事業所によってカリキュラムの内容は異なり、特定のスキル習得に力を入れている場合もあるため、まずはカリキュラムが自分に合っているかをチェックしましょう。コミュニケーションスキルに不安を抱えている場合は、ソフトスキル講習やマナー講座、面接時の応答などサポートが充実している事業所を選ぶのがよいでしょう。コミュニケーションスキルやビジネスマナーなど、自分が働く上で不安に感じていることを訓練・改善していける事業所を選ぶことが大切です。
障害特性への対応を確認する
就労移行支援事業所は、事業所によって対応する障害種別が異なるケースがあります。就労移行支援事業所を選ぶ際は自分の障害種別が対象になっているかを確認してください。自分の病気や障害への専門的な知識があり、症状や特性に合わせて対応できるスタッフが在籍しているかどうかを確認しましょう。事業所によっては社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士といった資格を持つスタッフが在籍している場合もあります。
通いやすさ・アクセスを重視する
就労移行支援は事業所に通って支援を受けるため、通いやすい場所にあるかどうかも事業所選びの重要なポイントです。頻繁に長距離を移動するのは心身の負担になるため、自宅からのアクセスが良い事業所を選びましょう。「もし続けられなかったら、それが失敗体験になって、働くこと自体が怖くなってしまうのが嫌だった」という理由から、自分にとって無理のない距離にある事業所を選んだという声もあります。
事業所の雰囲気・スタッフとの相性を確かめる
就労移行支援は、ある程度の期間通い続けることになるため、実際に支援をしてくれる支援員との相性や、一緒に通所することになる他の利用者との相性が合っている方が前向きな気持ちで通えるようになります。多くの就労移行支援事業所では見学や体験利用ができるので、実際に行って事業所の広さやバリアフリーの状況、利用している人たちの障害の種別、性別、年齢など雰囲気を確かめてみましょう。体験利用は何か所でもできるので比較して自分に合った事業所を選ぶことができます。
就職実績と定着率を確認する
就労移行支援事業所に通う目的は、適性に合った職場へ就職しできるだけ長く働くことですから、就職実績は事業所を比較する上でも大きなポイントになります。就労移行支援事業所から就職した人数や就職先の業種、職種は、多くの場合では就労移行支援事業所のホームページやパンフレットに就職実績として掲載されています。就職後の定着率(6ヶ月以上働き続けている人の割合)も重要です。定着率が高い事業所は手厚いサポートが期待できます。
事業所のタイプを理解する
事業所のタイプには「大手総合型」と「専門特化型」があります。大手総合型は全国展開しており実績が豊富です。プログラムや求人数も多い傾向にあります。一方、専門特化型は特定の障害や分野に特化しておりより専門的なサポートが受けられます。自分の状況やニーズに合わせてどちらのタイプが適しているか検討しましょう。
就労移行支援の利用手続きの流れ
就労移行支援を利用するためには、いくつかの手続きが必要です。流れを理解しておくことでスムーズに利用を開始することができます。
事業所探し・問い合わせ
まず、自分に合った事業所を探します。お住いの地域の役所にある障害福祉課等に相談すると、通える範囲内にある事業所を紹介してもらうことができます。WAMNETやLITALICO仕事ナビなどのインターネットを利用して検索することもできます。その他にも、通院先(主治医、ケースワーカー)、障害者就業・生活支援センター、ハローワーク等に相談する方法があります。
見学・体験利用
気になる事業所が見つかったら、見学や体験利用を通じて実際の訓練内容や施設の雰囲気を確認します。無料体験や見学を積極的に申し込んで、事業所の雰囲気やトレーニング内容、支援員の人柄などを確かめましょう。見学・体験時に「雰囲気が悪い」「利用者数が少ない」などは注意してみてもいいかもしれません。また、最近の就職者がいつ出たか、どのくらいかなども直接聞いてみても良いでしょう。
受給者証の申請
現在お住いの地域の障害福祉課等に必要書類を提出し、利用したい事業所を伝えます。その際「障害福祉サービス受給者証」の申請手続きも行います。利用したい事業所が決まっていない状態では受給者証を申請できないため注意が必要です。受給者証を申請する際には、自立支援医療受給者証(精神疾患を理由とする受診のために交付されているもの)や主治医の診断書(障害や病名が確認できる主治医の意見書)などを持参すると手続きがスムーズです。障がい者手帳をお持ちの方でも受給者証がないと就労移行支援のサービスを受けることはできません。障がい者手帳を取得していない方が受給者証を申請する場合は、医師による診断書や通院履歴の提出が求められます。
認定調査と受給者証の交付
申請書類を提出した後に、市区町村の認定調査員との面接が実施されます。この認定調査では、心身の状況や普段の日常生活の様子など80項目について聞き取りが行われます。受給者証が交付されたら就労移行支援事業所と正式に契約を結び、サービスの利用が開始されます。利用契約を交わすと、就職するまで原則2年間を期限に通うことができます。受給者証が発行されるまでの期間は市区町村によって異なりますが、一般的には2週間から2ヶ月程度が目安です。場合によっては3ヶ月以上かかることもあります。受給者証の申請や発行にかかる手数料は基本的にありません。
代理申請という選択肢
受給者証の申請方法には「自分で申請する」と「就労移行支援事業所に代理申請してもらう」の2つの方法があります。今すぐ利用を開始したい方は、就労移行支援事業所に代理申請してもらいつつ、申請期間中にその事業所を体験利用することで、実質的に早くサービスを受けることができます。
就労移行支援のメリットとデメリット
就労移行支援を利用することで多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットもあります。両方を理解した上で利用を検討することが大切です。
就労移行支援の主なメリット
就労移行支援を利用することで、専門的な就職支援が受けられます。就職に向けた準備から就職活動、就職後の定着支援まで一貫したサポートを受けることができます。また、グループワークやロールプレイなどを通じて職場で必要なコミュニケーションスキルを身につけることができます。様々な訓練や実習を通じて、自分の得意なことや苦手なこと、向いている仕事を見つけることができます。決まった時間に通所することで働くための生活リズムを整えることができ、同じような悩みを持つ利用者同士で交流することで孤独感を軽減しモチベーションを維持することができます。
就労移行支援の主なデメリット
一方で、いくつかのデメリットもあります。原則として利用期間は最大2年間と定められているため、体調を整えるのに時間がかかる方や自分に合った仕事をじっくり探したい方には期間が短く感じられるかもしれません。就労移行支援は働く場ではなく就職の準備をする訓練の場ですので、通っても給料は支給されません。通所や生活のためにアルバイトをしたくても禁止されていることも、よく不満の原因として挙げられます。アルバイトができるなら就労できているので支援は不要という考えによります。就労移行支援は「就職支援」であり「就職保証制度」ではありませんので、就職できるかどうかは体調の安定具合、訓練への取り組み姿勢、地域の求人状況などに左右されます。また、事業所ごとに支援内容や質が異なるため、自分に合わない事業所を選ぶと時間や労力を無駄にしてしまう可能性があります。
利用者の満足度について
就労移行支援事業所を利用して良かったと感じている人は全体の91.0%で、ほとんどの方が「利用して良かった」と回答しています。後悔しないためには、事前の情報収集と見学・体験を通じて自分に合った事業所を慎重に選ぶことが重要です。
就労移行支援の実績データ
就労移行支援の効果を理解するために、具体的な実績データを確認しておくことは有益です。
就職率について
厚生労働省の調査によると、就労移行支援を使った方の全国平均の就職率は約58.8%となっています。令和4年時点では57.2%という数値も報告されています。就労継続支援A型の就職率は26.9%、B型では11.2%とされており、就労移行支援が就職に強い支援であることがわかります。
職場定着率について
就労移行支援を利用して就職した方の職場定着率は、3ヶ月間で90.3%、1年間では76.0%となっています。何の支援制度も受けていなかった方の職場定着率は3ヶ月の時点で71.8%、1年の時点で52.7%となっており、就労移行支援を利用した方の定着率が高いことがわかります。障害種別の定着率を見ると、精神障害が49.3%、発達障害が71.5%と障害ごとにばらつきがあります。
利用期間と移行者数
就職者の平均利用月数は平成29年度で15.9ヶ月(約1年4ヶ月)となっています。また、就労移行支援の利用期間は6ヶ月以上1年未満が最多となっています。就労移行支援を含む就労系福祉サービスから一般企業へ就職する人の数は年々増加しており、厚生労働省の調査では2020年度は約2.2万人が一般就労への移行を実現しました。
大手事業所の実績
全国の就労移行支援1事業所における平均就職者数は4.6人です。LITALICOワークスでは累計17,000名以上の方の就職をサポートしており、就職後も約9割の方が働き続けています。
コミュニケーション障害がある方の就労移行支援活用のポイント
コミュニケーション障害がある方が就労移行支援を最大限に活用するためには、いくつかの重要なポイントがあります。
コミュニケーション訓練を重視した事業所選び
コミュニケーション障害がある方が就労移行支援を活用する際は、コミュニケーションスキルの訓練が充実している事業所を選ぶことが重要です。具体的には、ソーシャルスキルトレーニング(SST)のプログラムがあるか、グループワークの内容が自分に合っているか、個別のコミュニケーション支援が受けられるかなどを確認しましょう。
自分の特性を理解してもらえる環境づくり
就労移行支援を効果的に活用するためには、支援スタッフに自分の特性や困りごとをしっかり伝えることが大切です。コミュニケーションの何が苦手なのか、どのような場面で困難を感じるのか、どのようなサポートがあると助かるのかなどを具体的に伝えることで、より適切な支援を受けることができます。
無理のないペースで取り組む
コミュニケーションスキルの向上には時間がかかることがあります。焦らず自分のペースで少しずつ取り組むことが大切です。最初は見学や短時間の体験から始めて、徐々に通所日数や時間を増やしていく方法も有効です。体調に合わせて柔軟に対応してもらえる事業所を選ぶことも重要です。
職場実習を活用する
就労移行支援では、実際の職場で働く体験ができる職場実習のプログラムがあります。この機会を活用して実際の職場でのコミュニケーションを経験し、自分に向いている仕事や環境を見つけましょう。実習を通じて自分がどのような配慮を必要としているかも明確になります。
就職後の定着支援を活用する
就労移行支援事業所を利用し就職できた方に対する職場定着支援には費用はかかりません。就職後6ヶ月間無料で受けることができます。職場定着支援の6ヶ月間を過ぎた後、7月目から最長3年間、希望によって就労定着支援サービスが受けられます。就職後も困ったことがあれば相談できる体制があることを知っておくと安心です。
まとめ
コミュニケーション障害がある方にとって、就労移行支援は就職に向けた重要なステップとなります。就労移行支援は障害のある方が一般企業への就職を目指すための通所型福祉サービスであり、就職に向けた準備から就職活動、就職後の定着支援まで一貫したサポートを受けることができます。自分の特性を理解し適切な支援を受けることで、自分に合った働き方を見つけることができます。
事業所選びでは、カリキュラムの内容、障害特性への対応、通いやすさ、雰囲気、就職実績などを総合的に検討することが大切です。見学や体験利用を積極的に活用して自分に合った事業所を見つけましょう。就労移行支援を利用して良かったと感じている人は全体の91.0%にのぼり、ほとんどの方が満足しているという結果からも、適切な事業所を選ぶことの重要性がわかります。
就労移行支援を利用することでコミュニケーションスキルを向上させながら、自信を持って就職活動に臨むことができます。焦らず自分のペースで着実に準備を進めていくことが、長く働き続けるための第一歩となります。

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