コミュニケーション障害の診断は何科?大人が受診すべき病院と流れを解説

心の病

「人とうまく話せない」「相手の気持ちが読み取れない」「職場でのコミュニケーションがうまくいかない」といった悩みを抱えている大人の方は少なくありません。大人のコミュニケーション障害の診断は、精神科または心療内科で受けることができます。特に発達障害外来を設けている医療機関であれば、より専門的な診断と治療を受けられます。こうした困りごとの背景には、医学的に定義された「コミュニケーション障害」が隠れている可能性があり、適切な診断を受けることで生活の質を大きく改善できる場合があります。

しかし、いざ「病院に行ってみよう」と思っても、「何科を受診すればいいのかわからない」「どこに相談すればいいのかわからない」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。この記事では、大人のコミュニケーション障害について、その定義や症状から、受診すべき診療科、診断の流れ、治療方法、そして利用できる支援制度まで、詳しく解説していきます。

  1. コミュニケーション障害とは何か
  2. DSM-5によるコミュニケーション障害の分類と特徴
    1. 言語症(言語障害)の特徴
    2. 語音症(語音障害)の特徴
    3. 小児期発症流暢症(吃音)の特徴
    4. 社会的(語用論的)コミュニケーション障害の特徴
    5. 特定不能のコミュニケーション障害について
  3. 大人になってからコミュニケーション障害に気づくケース
  4. コミュニケーション障害の原因について
  5. コミュニケーション障害の主な症状
  6. ASD(自閉スペクトラム症)との関連性
  7. 職場でのコミュニケーションにおける困りごと
  8. コミュニケーション障害の診断は何科を受診すべきか
  9. 精神科と心療内科の違いについて
  10. 吃音の場合に受診すべき診療科
  11. 医療機関の探し方
  12. 受診前に準備しておくこと
  13. 初診当日から診断までの流れ
  14. 心理検査と診断について
  15. コミュニケーション障害の治療方法
    1. SST(ソーシャルスキルトレーニング)について
    2. 認知行動療法・カウンセリングについて
    3. 言語聴覚士による言語療法について
    4. 環境調整という方法
  16. 職場での具体的な対処法
  17. コミュニケーション障害がある方に向いている仕事
  18. 二次障害について知っておくべきこと
  19. 利用できる相談窓口と支援機関
    1. 発達障害者支援センターについて
    2. その他の支援機関について
  20. 障害者手帳と各種支援制度について
  21. セルフチェックについて
  22. まとめ

コミュニケーション障害とは何か

コミュニケーション障害とは、言語や対人スキルに問題があり、適切なコミュニケーションが難しい状態を指します。アメリカ精神医学会が設定している診断基準「DSM-5」では、言葉を扱うことに対して障害が発生する複数の疾患をまとめた「コミュニケーション症群/コミュニケーション障害」として分類しています。

ここで重要なのは、一般的に使われる「コミュ障」という言葉とは全く異なるということです。「コミュ障」は俗語であり、医学的な定義はありません。一方、コミュニケーション障害は医学的な診断名であり、適切な支援や治療の対象となります。正しい診断を受けることで、自分の特性を理解し、効果的な対処法を見つけることができるようになります。

DSM-5によるコミュニケーション障害の分類と特徴

DSM-5では、コミュニケーション障害は5つのカテゴリに分類されています。それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

言語症(言語障害)の特徴

言語症は、話す・書くといった言語の習得や使用に困難を伴う症状です。語彙や文法の理解・使用が年齢相応のレベルに達していないことが特徴となっています。この症状は、発声発語器官のどこかに異常があるため正しい発音ができなくなる「構音障害」と、大脳の言語領域に異常が起こり言葉を使うことができなくなる「失語症」の2つに分けられます。言語能力全般の乏しさから、社会参加や学業成績、職業的能力に制限がかかることがあります。聴力やその他の感覚、運動機能の問題、原因となる身体疾患などがないことが診断の条件となります。

語音症(語音障害)の特徴

語音症とは、身体や神経に障害がないにもかかわらず、うまく言葉を発声できない症状です。特定の音を正しく発音することが困難で、例えば「さ行」が「た行」になってしまうなどの特徴があります。語音症の方は学業や就職、職業的な能力などに大きな影響が出てしまうケースが珍しくありません。日常生活において言葉でのコミュニケーションに支障をきたすことがあり、周囲の理解と適切な支援が重要になります。

小児期発症流暢症(吃音)の特徴

吃音は、話し始めに言葉がつっかえる、言葉を繰り返す、言葉が途切れるなど、言葉を流暢に発することに困難さを有する障害です。言葉を流暢に発する力が、実年齢に対して明らかに低く、社会参加や学業成績、職業的能力に制限がかかります。症状の始まりは発達期早期(幼少期)だといわれていますが、大人になってもその症状が続くことがあります。吃音に悩む成人の方も多く、専門的な治療やリハビリテーションによって症状の改善が期待できます。

社会的(語用論的)コミュニケーション障害の特徴

社会的(語用論的)コミュニケーション症は、言葉の意味そのものはわかっていても、話し相手や状況に応じたコミュニケーションが困難なことが特徴です。例えば、相手が子どもだからわかりやすくゆっくり話したり、図書館の中で静かに話したりといった「場面に応じた対応」ができません。また、会話の文脈を読み取ることや、皮肉やユーモアを理解することも困難です。こういった特徴がASD(自閉スペクトラム症)や知的障害などによるものではないことが、診断の条件となっています。

特定不能のコミュニケーション障害について

コミュニケーションを困難にする症状があるものの、上記のコミュニケーション症および神経発達症群(発達障害)の診断基準を完全には満たさない場合に用いられる診断名です。このカテゴリは、明確な分類が難しい場合でも適切な支援につなげるために設けられています。

大人になってからコミュニケーション障害に気づくケース

コミュニケーション障害は、多くの場合は子どものうちに症状が表れると言われています。しかし、大人になってから発症することや、子どものころは特に困難を感じておらず大人になってコミュニケーションが複雑化することで表面化することも考えられます。

子どもの頃は、親や教師など周囲の援助のおかげで気づかず、大人になり環境や役割が変化することによって特性が顕在化し、適応障害やうつ病など精神障害を合併して精神科を受診する場合がよくあります。大人になって、より高度で複雑なコミュニケーションが要求されるようになると困難を抱える場面が出てきて、そこで初めてコミュニケーション障害と診断されるケースも少なくありません。

職場では特に、会議での発言や上司・同僚・部下との関係構築、取引先との交渉など、さまざまな場面で高度なコミュニケーション能力が求められます。こうした環境の中で困難を感じ、「自分はコミュニケーション障害かもしれない」と気づく方が増えています。

コミュニケーション障害の原因について

コミュニケーション障害(社会的コミュニケーション症)の原因は、詳しく分かっていないのが現状です。コミュニケーション障害は発達期の障害で、生まれつきの脳機能の障害によるものと考えられています。

ここで非常に重要なのは、親の育て方やしつけ方などが原因ではないことが科学的に明らかになっているということです。言語症や小児期発症流暢症では、遺伝的要素も大きいとされています。家族に自閉スペクトラム症や限局性学習症のある人がいると、社会的(語用論的)コミュニケーション症のリスクが高まります。そのため、この障害の発生には遺伝的な影響が関係していると考えられています。しかし、言語症やADHDを併発することも多いことから、遺伝以外に環境や発達上の問題も関係している可能性があります。

コミュニケーション障害の主な症状

コミュニケーション障害の主な症状としては、話したいことをうまくまとめることができない、話す内容は浮かんでいてもうまく発音できない、話し始めにつっかえてしまうことがある、状況に応じた振る舞いが苦手、相手の表情や身振りから感情を読み取るのが苦手、言葉を額面通りに受け取ってしまい冗談や皮肉が通じにくい、会話の距離感が近くなりすぎることがある、ルールや約束を忠実に守ることに必死になり相手にも求めてしまう、といったものがあります。

これらの症状は人によって現れ方が異なり、すべての症状が同時に現れるわけではありません。自分に当てはまる症状がある場合は、専門医に相談することをお勧めします。

ASD(自閉スペクトラム症)との関連性

コミュニケーション障害と密接に関連しているのがASD(自閉スペクトラム症)です。ASDは主に社会的なコミュニケーションの困難さや空間・人・特定の行動に対する強いこだわりがある等、多種多様な障害特性のみられる発達障害のひとつです。2013年のアメリカ精神医学会(APA)の診断基準DSM-5の発表以降、自閉スペクトラム症としてまとめて表現することが多くなっています。

ASDの方は、対人関係での微妙なやり取りが苦手なことが多く、言葉を額面通りに受け取ってしまう傾向や、相手の表情や身振りから感情を読み取るのが苦手といった特徴が見られます。また、会話の距離感が近くなりすぎることがあったり、相手の状況を考えずに自分の言いたいことを中心に話したり、ルールや約束を忠実に守ることに必死になり相手にも求めてしまうことがあります。

職場でのコミュニケーションにおける困りごと

コミュニケーション障害のある人は、仕事上で他者との意思疎通に困難を抱えるケースがあります。言葉の選び方や表現をすることが苦手であることもあるため、メッセージの伝達がうまくいかないことも珍しくありません。また、非言語的なサインや微妙なニュアンスを読み取ることが難しいため、相手の本当の意図を誤解することがあります。発達障害の方がコミュニケーションの取り方で困りごとを感じやすいのが職場です。

大人になってからは、日常生活だけでなく、職場で仕事が臨機応変にこなせなかったり、時には周囲の人と異なる言動をして「空気が読めない」などと言われてしまったり、悩みやトラブルを抱えがちです。さらに、そうしたトラブルがストレスとなって、不安症やうつ病など精神的な不調(二次障害)に繋がることもあります。

コミュニケーション障害の診断は何科を受診すべきか

コミュニケーション障害は発達障害の中に位置づけられているため、「コミュニケーション障害かもしれない」と感じたときは、発達障害の診断ができる精神科や心療内科、発達障害外来のある総合病院などを受診するといいでしょう。大人の発達障害の診療は、「精神科」または「心療内科」で行っています。施設によっては、「メンタルクリニック」や「こころのクリニック」などの名称である場合もあります。

最近では、精神科の中に「発達障害外来」という発達障害について専門的に診療・相談できる部門を設けている医療機関もあります。このような専門外来では、発達障害に精通した医師やスタッフが在籍しており、より適切な診断と治療を受けることができます。

精神科と心療内科の違いについて

心療内科も精神科も「こころの病」を治療する診療科目ですが、大きな違いがあります。精神科は、精神つまり「こころ」の不調について診療する科です。現代ではうつ病、適応障害、躁うつ病、統合失調症、パニック障害、不安神経症、不眠症、社会不安障害、強迫性障害、認知症、発達障害などの診療をしています。

一方、心療内科は「内科」がベースです。体に症状が出るものの、その要因として心理的な背景が多いときの診療科です。心療内科がみていく病気は、身体の症状を中心とする病気です。いわゆる心身症といわれる病気をみていきます。

発達障害の診断・治療に関しては、基本的に精神科が適切とされています。ただし、発達障害に対応しているかどうかを事前に確認してから受診することが重要です。近年では「メンタルクリニック」や「こころのクリニック」などと掲げて精神科と心療内科の両方を診療している医療機関も多くなっています。通院のしやすさ、医師の経歴や人柄、治療方針などで医療機関を選ぶことが望ましいでしょう。

吃音の場合に受診すべき診療科

吃音(小児期発症流暢症)の場合は、受診先の選択肢が少し異なります。成人後も症状が続く場合の治療方法としては、リハビリテーション科や耳鼻いんこう科などで、言語聴覚士による指導を受けるといったものがあります。一般的には、病院の耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、心療内科、精神内科、場合によっては口腔外科が受診窓口となります。

耳鼻咽喉科はその名のとおり、喉、つまり発声の問題も取り扱う科で、言語聴覚士という言葉の訓練などに特化した専門の人がいるところもあります。ただし、全ての耳鼻咽喉科に言語聴覚士がいるわけではありませんので、事前に確認することをお勧めします。

また、獲得性吃音の中でも心因性吃音であれば、精神科か心療内科が該当受診科となります。吃音が原因で人とコミュニケーションを取ることから避けたり、嫌な思いや悩みが大きくなったりした場合は、社会不安障害などの精神疾患を合併する恐れもあります。専門医に相談した上で、必要であれば薬物療法の対象となる場合もあるでしょう。国立障害者リハビリテーションセンターでは、18歳以上の方の吃音(どもり)の相談を受けています。専門外来がある医療機関への受診も選択肢の一つです。

医療機関の探し方

まずは、自宅や勤務先などから通院可能な距離にある精神科や心療内科を探してみましょう。その医療機関が発達障害の診療をしているか、発達障害の専門医がいるかどうかは、各医療機関に電話で問い合わせたり、Webサイトで「診療内容」などのページを確認したりしてみましょう。

「どこの病院を受診すればよいかわからない」という方は、お住まいの地域の発達障害者支援センターもしくは精神保健福祉センターに相談してみるとよいでしょう。これらの機関では、地域の医療機関の情報を持っており、適切な病院を紹介してもらえます。相談は無料で行うことができ、診断を受けていなくても利用できます。

受診前に準備しておくこと

多くの場合、精神科・心療内科の診察は予約制です。受診を希望するときには、それぞれの医療機関の定める方法で、初診の予約をする必要があります。現在、発達障害を診療可能な多くの精神科・心療内科の予約がとりにくくなっており、予約日が1か月以上先になることもあります。早めに予約を取ることをお勧めします。

予約時には、氏名、年齢(生年月日)、症状(気分、睡眠、食欲、人間関係など困っていること)、過去の精神科医療機関受診歴などを伝えます。別の精神科系医療機関を受診中の場合、紹介状(診療情報提供書)を求められることがあります。

多くの医療機関では、問診票やかかりつけ医等からの紹介状を持参するほか、母子手帳、育児記録、保育園・幼稚園の連絡帳、小学校・中学校の通知表、作文やノート等、現在通院されている精神科・神経科・心療内科からの診療情報提供書、問診票(ダウンロードしてご記入の上ご持参)などの持参を依頼されることがあります。これらの資料があると、幼少期からの発達の様子を把握しやすくなり、より正確な診断につながります。

なぜ「自分はコミュニケーション障害かもしれない」「発達障害かもしれない」と思ったのか、これまでの悩みや具体的なエピソードをメモなどに書いて準備しておくと役立ちます。また、子どものころの様子について、事前に家族から聞き取っておくことも有用です。もし可能であれば、当時の様子を知る家族などに一緒に来てもらうこともよいでしょう。

初診当日から診断までの流れ

診察開始前に、身長・体重や血圧・脈拍を計測したり、心理士や福祉士が先に大まかな話を聞いたり(インテーク)する場合があります。初めての問診では、一般的に30分から1時間程度、過去から現在にわたるご自身の話を聞かれます。医師は、みなさんの普段の生活を直接観察することはできないため、この問診で聞き取った情報をもとに、発達障害の特性があるか、どういった対応が必要かなどを検討します。

主に医師が聞く内容は、今何を心配している・困っている・悩んでいるか(主訴)、いつからどのようなことがあったか(受診の経緯)、幼少期からの発達の様子、学校や職場での経験、対人関係の困りごと、現在の生活状況などです。

神経発達症(発達障害)の診断までには時間がかかることもあります。初診から診断確定まで、複数回の受診が必要になるケースも珍しくありません。焦らず、医師と相談しながら進めていくことが大切です。

心理検査と診断について

発達障害の正確な診断には、幼少期から現在に至るまでの詳細な聴取に加え、各種の心理検査や知能検査、記憶検査等も踏まえた多角的な評価が不可欠であり、多くの時間が必要となります。

代表的な検査として、WAIS(ウェクスラー成人知能検査)があります。WAISは知能(IQ)を測定する世界標準の知能検査で、対象年齢は16歳から90歳です。WAIS検査は単にIQを測定するだけでなく、「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリ」「処理速度」という4つの領域を詳細に分析できるのが特徴です。

検査費用について、保険適用の場合、WAISやWISCの保険点数は450点で、3割負担の方で1,350円程度の負担で行えます。ただし、クリニックによっては自費扱いとなる場合があり、その場合は2万円から3万円程度かかることもあります。WAIS検査の所要時間は2~3時間で、検査日から2~3週間前後でフィードバック(結果説明)が行われます。なお、以前に知能検査を受けられた方は、前回の検査から2年以上空ける必要があります。

重要なのは、知能検査の結果だけで発達障害と診断されるわけではないということです。発達障害の診断のためには他の発達検査や発達歴の聴取などが必要になります。

コミュニケーション障害の治療方法

コミュニケーション障害の原因は、現時点ではすべてが明らかになっているわけではありません。症状の種類によって関係する要因が異なり、遺伝や発達、家庭環境など複数の要素が重なっている場合が多いため、治療法も一つではありません。社会的(語用論的)コミュニケーション症に対する治療で、明確なエビデンス(科学的根拠)のあるものはほとんどありません。そのため、個々の症状や困りごとに合わせた対応が重要になります。

SST(ソーシャルスキルトレーニング)について

社会的コミュニケーション症では、SST(ソーシャルスキルトレーニング)が用いられます。これは、人とのやりとりや集団の中での振る舞い方を学び、対人関係の力を高めることを目的とした訓練です。SSTでは、具体的な場面を想定したロールプレイなどを通じて、社会的状況に応じたコミュニケーションを習得することができます。医療機関や支援施設で実施されていることが多いです。

認知行動療法・カウンセリングについて

治療としては、認知行動療法で不安恐怖の認知のゆがみを理解し、少しずつ緊張しやすい場面になれていく暴露療法が有効です。認知行動療法では、自分の考え方や行動のパターンを見直し、より適応的な対処法を身につけていきます。コミュニケーションに対する不安や恐怖がある場合には、特に効果的です。

言語聴覚士による言語療法について

言語症や吃音では、言語聴覚士による言語療法が中心となります。発音や語彙、会話の練習を通して、言葉のやりとりをスムーズにする力を育てていきます。言語聴覚士は、リハビリテーション科や耳鼻咽喉科などに在籍していることが多いです。

環境調整という方法

発達障害の方の困りごとは、「特性」と「環境」との相互作用により生まれるものです。「特性」に対してソーシャルスキルなどを身につけて対処することもできれば、「環境」自体にアプローチすることもできます。「環境」にアプローチする方法は、「環境調整」と呼ばれています。

職場での環境調整の例としては、変更の少ないルーチン作業の仕事につく、コミュニケーションが必要な業務を避けパソコンスキルを活かす業務につく、口頭だけでなくメールで指示をもらう、スマホのアラーム機能やスケジュール機能を活用する、曖昧な表現を避け具体的な数字や期限で指示をもらうといったものがあります。

職場での具体的な対処法

職場でコミュニケーション障害による困りごとがある場合、以下のような対処法が有効です。

まず、曖昧な表現を避け具体的に伝えることが重要です。「適度に」「あと少し」「ちょっと多めに」「だいたいこれくらい」などの表現は避け、数字を入れて「100部印刷してください」「30分以内にこの仕事を完了させてください」「17時までに報告してください」などと明確に伝えると、当事者も正しく理解できます。

また、一度に複数の指示を出さないことも大切です。一度にいくつもの指示を出すと当事者が混乱しやすくなるので、一つの作業が完了してから次の指示をするようにしたり、順番や優先順位を示したりするとよいでしょう。

さらに、マニュアルの工夫として、具体的な表現にマニュアルを書き変えたり、文字ではなく音声のマニュアルを作ったりするなどの方法があります。そして何より、周りの人がコミュニケーション障害というものの特性や症状、その障害をもつ人の困りごとなどを理解することが大切です。相手に「苦手だと思うこと」を聞いてみると良いでしょう。

コミュニケーション障害がある方に向いている仕事

コミュニケーション障害がある方には、人と関わることが少ない仕事、マニュアルがあるルーティン作業、自分の裁量で進められる仕事がおすすめです。例として、請求書の作成・勤怠チェック・給与計算などの事務職、データ入力、プログラミング、研究職、倉庫作業などがあります。自分の特性を理解し、得意を活かせる仕事を選ぶことで、より働きやすい環境を見つけることができます。

二次障害について知っておくべきこと

発達障害の特性による生きづらさや困りごとといった心理的なストレスが元となり、うつ病や不安症、物質関連症及び嗜癖症群などの精神疾患や睡眠・覚醒障害を引き起こしてしまうことがあります。これを二次障害といいます。

うつ病や不安障害などの精神疾患の疑いがあり精神科を受診したところ、検査によって発達障害だったと分かるケースが大人の発達障害では多々あります。この場合は、発達障害だと気付かないまま生活をしており、生きづらさや周りとの違いに悩みながら生きてきた方たちが多いです。

発達障害の二次障害と呼ばれる疾患や症状は、大きく分けて「内在化障害」と「外在化障害」の二つがあります。内在化障害は気持ちが落ち込んだり不安になったりするなど、情緒的な問題が自分自身に向けられる点が特徴です。うつ病、不安障害、社会不安障害、適応障害などが含まれます。外在化障害とは、他者に影響を及ぼす行動面の問題のことです。

大人の発達障害を持つ方の約70%が、うつ病や不安障害などの二次障害を経験するとの研究データがあります。特に「周囲に理解されない」「努力しても成果が出ない」という経験が重なることで、自己肯定感が低下しやすい傾向があります。

二次障害の原因はストレスや不安によるものが大きいため、それを適度に解消することが重要です。二次障害は、発達障害がある方に必ず起こるという訳ではありませんが、生きづらさや困りごとを放置したり適切な対処法を取らなかったりした場合に発症しやすい傾向があります。困っていることや悩んでいることについて、周囲の人や支援機関などに相談したり対処法を取り入れたりすることで、二次障害の発症を防ぐことができる可能性があります。

利用できる相談窓口と支援機関

発達障害者支援センターについて

発達障害者支援センターは「発達障害者支援法 第三条」にもとづき、発達障害への総合的な支援を行う地域拠点として平成16年12月に発足しました。2023年3月時点で98拠点あり、全国47都道府県すべてに設置されています。

発達障害者支援センターは、発達障害のある方への支援を総合的に行うことを目的とする専門機関です。発達障害のある方やその家族などからの相談を受け付けており、指導や助言を行うほか、必要に応じて地域の関係機関を紹介しています。

利用対象者は、発達障害について悩む当事者だけでなく、家族や職場で関わる方、友人、教育に関わる方といった周囲の方も利用することができます。また、必ずしも精神保健福祉手帳の取得や発達障害の診断を受けている必要はありません。医師から発達障害の診断を受けていない人でも支援を受けることが可能です。

利用の流れとしては、まず最寄りの発達障害者支援センターの窓口を探します。窓口が分かれば、電話で事前に相談予約するのがオススメです。直接来所する以外にも、電話やメールなどで対応が可能な場合もあるので事業所に確認すると良いでしょう。全国の発達障害者支援センターの一覧は、国立障害者リハビリテーションセンターのウェブサイトで確認できます。

発達障害者支援センターでは発達障害での困りごとやライフステージに合わせて、「相談支援」「発達支援」「就労支援」の3つの支援を行っています。費用は無料で相談できる機関です。

その他の支援機関について

精神保健福祉センターは各都道府県に設置されている相談窓口で、心の問題や病気での困りごとに対応してくれます。発達障害に関する相談も受け付けています。

地域若者サポートステーションは、働きたいと思う若者たちとじっくりと向き合い、「働き出す力」を引き出し、「職場定着するまで」を全面的にバックアップする厚生労働省委託の支援機関です。障害者就業・生活支援センターは、就労と生活の両面から支援を行う機関です。

自助会・互助会・家族会・ピアサポート団体は、コミュニケーション障害のある人同士の支えあいを目的に、情報交換などを行う団体です。お互いの悩みを打ち明けたり、対処方法を共有したりします。

障害者手帳と各種支援制度について

発達障害の方で知的障害のある方は「療育手帳」を、大人になって発達障害がわかった方の多くは「精神障害者保健福祉手帳」を申請することになります。ADHDを含む発達障害は2000年以降に診断が増えてきた「第4の障害」です。このため、発達障害者への障害者手帳はすでにある3障害(身体・知的・精神)の支援制度に後から組み込まれる形になりました。つまり発達障害”専用”の障害者手帳はありません。

発達障害のある方が精神障害者保健福祉手帳を申請するには、発達障害があり長い期間日常生活や社会生活に支障が出ていること、医師から発達障害の診断を受けてから6か月以上たっていることの2つの条件を満たしている必要があります。

等級は1級から3級まであり、等級に応じて税金の控除や医療費の軽減、公共交通機関の割引など、生活の負担を軽減するさまざまなサービスを受けられます。障害者手帳を取得することで、就活の際に「障害者雇用枠」での応募が可能になります。障害者雇用枠では、障害特性への配慮を受けながら働くことができます。

ただし、障害者手帳を取得するには、医師から発達障害の確定診断を受け、診断書を発行してもらわなければいけません。そのため、確定診断が下りないいわゆる「グレーゾーン」の方は、手帳を取得できません。

また、障害者手帳を取得している方、あるいは発達障害の診断を受けている方はそのことも告知する必要があり、それによって生命保険への加入が難しくなってしまうケースがあります。ただし、保険会社や加入する商品によっては、発達障害の程度などを勘案して通常の保険加入が認められたり、保険料を上乗せするなど条件付きで加入ができる場合もあります。精神障害者保健福祉手帳には有効期限があり、「交付日から2年が経過する日の属する月の末日」が期限となっています。期限が近づいたら更新手続きが必要です。

セルフチェックについて

自分の発達特性を知ることは、未来に向けた第一歩です。特性を理解することで、自分に合う生活上の工夫をしたり、カウンセリングなどのサポートを受けたり、症状によっては病院を受診することもできます。

成人期のADHD自己記入式症状チェックリスト(Adult ADHD Self Report Scale;ASRS-v1.1)は、世界保健機構(WHO)と成人期ADHD作業グループの協力により作成されました。成人期のASD(自閉スペクトラム症)の自己記入式症状チェックリスト(RAADS-14)も利用可能です。

ただし、セルフチェックの結果だけで、ADHDやASDと診断できるわけではありません。神経発達症(発達障害)の特性に似た症状があらわれる病気や障害は、ほかにも多くあるため、医療機関では問診や専門的な検査を行うなどして、慎重に診断を行います。ADHD・ASDと判断されるには、医療機関を受診して診断を受けることが不可欠です。セルフチェックリストで当てはまる場合でも、すぐに発達障害だと決めつけないことが大切です。セルフチェックを通して「発達障害かも」という思いが強まったなら、むしろそれをクリニックや専門機関に相談するきっかけにしましょう。

まとめ

コミュニケーション障害は、適切な診断と支援を受けることで、生活の質を大きく改善できる可能性があります。「コミュニケーション障害かもしれない」と感じたら、まずは精神科や心療内科、発達障害外来のある医療機関を受診することをお勧めします。受診前には、発達障害者支援センターや精神保健福祉センターに相談して、適切な医療機関を紹介してもらうこともできます。

診断を受けることで、自分の特性を理解し、適切な対処法や支援を受けることができるようになります。一人で抱え込まず、専門家や支援機関に相談することが大切です。コミュニケーションの困難さを抱えながらも、多くの方が自分に合った方法を見つけ、社会で活躍しています。まずは一歩を踏み出してみてください。

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