場面緘黙症の子どもが給食当番を担当する場合、声を出す役割を免除し、食器運びや台拭きなど声を出さなくてもできる役割に変更してもらうことが効果的な配慮となります。学校への配慮依頼は、担任の先生に場面緘黙の特性を簡潔に説明した上で、具体的にどのような役割なら担当できるかを提案する形で行うとスムーズです。場面緘黙症は「話さない」のではなく「話せない」症状であり、2024年4月からは民間事業者を含むすべての学校で合理的配慮の提供が法的義務となっているため、適切な配慮を求めることは子どもの権利として認められています。
この記事では、場面緘黙症の基本的な特徴から、給食当番における具体的な配慮の方法、保護者から学校への配慮依頼の書き方、そして教員の方が知っておくべき対応のポイントまで、幅広く解説していきます。場面緘黙のお子さんを持つ保護者の方はもちろん、学校現場で子どもたちと接する先生方にも参考になる内容をお届けします。

場面緘黙症とは何か 話したくても話せない子どもたちの実態
場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)とは、家庭などの安心できる場所では普通に話すことができるにもかかわらず、学校や職場などの特定の場所や状況において話せなくなってしまう症状のことです。選択性緘黙とも呼ばれるこの症状は、医学的には「不安症群」に分類されており、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では不安症のカテゴリに属しています。
ここで最も重要なのは、場面緘黙の子どもは自分の意思で「話さない」のではなく、「話せない」という点です。これは非常に誤解されやすいポイントですが、本人は話したくても話せないという状況に置かれています。「恥ずかしがり屋」や「内気な性格」とは本質的に異なり、強い不安によって声を出すことができなくなってしまう症状なのです。
場面緘黙症の診断基準について
DSM-5における場面緘黙(選択性緘黙)の診断基準では、まず他の状況で話しているにもかかわらず、話すことが期待されている特定の社会的状況において、話すことが一貫してできないことが挙げられます。次に、その障害が学業上、職業上の成績、または対人的コミュニケーションを妨げていることが求められます。そして、その障害の持続期間は少なくとも1ヶ月以上続いていることが条件となります。
さらに、話すことができないのは、その社会的状況で要求されている話し言葉の知識が不足しているためではないこと、そしてその障害はコミュニケーション症では説明できず、自閉スペクトラム症や統合失調症などの経過中にのみ起こるものでもないとされています。
場面緘黙症の主な症状と発症率
場面緘黙症の最も大きな特徴は、家庭では普通に話せている子どもが、学校などの特定の場所で全く話せなくなってしまうことです。話せない状態が月単位や年単位で長く続くことがあり、その場所がリラックスできる状態であっても話すことができません。多くの場合、集団生活が始まる4歳以降に症状が発見されます。
小学生約14万7000人を対象とした大規模な調査によると、場面緘黙の出現率は0.21パーセントとされており、これは約500人に1人という割合です。つまり、小学校に1から2人はいる計算になります。決して珍しい症状ではなく、どの学校にも場面緘黙の子どもがいる可能性があるということを認識しておく必要があります。
また、自分の意思の通りに体を動かせなくなる「緘動(かんどう)」という症状が見られるケースも比較的多いです。場面緘黙児のほとんどは、それ以外に何らかの不安に関連した症状を持っていることが多く、社交不安障害、分離不安障害、完全主義的傾向、強迫的傾向などが見られます。
場面緘黙症の原因と発達障害との関連
場面緘黙の原因は完全には特定されていませんが、様々な要因が絡み合って発症すると考えられています。不安になりやすかったり、緊張しやすかったりする本人の性質や、言葉を発することがストレスになる環境が影響しているとされています。環境要因としては、入園や入学、転校などの急激な環境変化が挙げられます。最近の研究では、家庭環境や養育方法よりも、環境要因など社会的な要因の方が大きな影響を及ぼすと考える傾向にあります。つまり、親の育て方が原因ではないということです。
場面緘黙は発達障害者支援法の対象となっている障害の一つでもあります。場面緘黙症の人の中には、自閉症スペクトラム障害(ASD)のような発達障害が原因で緘黙が引き起こされていることも多いと言われており、近年の研究では、対象とした場面緘黙児者の63パーセントにASDの併存があったとする報告もあります。
場面緘黙は純粋な場面緘黙(場面緘黙のみを発症)、言語障害などを併せ持つ場面緘黙(吃音などを重複)、発達障害などを併せ持つ場面緘黙(自閉スペクトラム症や知的能力障害などを重複)の3つに分類できます。学校教育(特別支援教育)では「情緒障害」に位置づけられており、特別支援学級は「自閉症・情緒障害」の対象、通級による指導は「情緒障害」の対象として支援・指導を受けることができます。
学校での合理的配慮の基本 場面緘黙症の子どもへの支援
合理的配慮とは、「障害のある人が社会生活を送る上で、障害のない人と同じように社会参加したり権利を行使したりできるようにするために行う調整や変更」のことです。2016年に施行された「障害者差別解消法」により、合理的配慮は国や自治体などでは法的義務、民間企業や事業者では努力義務として定められていました。そして2024年4月からは、民間事業者においても合理的配慮の提供が法的義務化されました。
学校は、本人や家族から申し出があったら、必ず合理的配慮を提供しなければなりません。具体的にどのような配慮をするかは定められておらず、必要な支援や配慮の方法は人によって違うため、一人ひとりに合ったものを考えていく必要があります。そのため「建設的対話によって合意形成をすることが必要」とされています。
場面緘黙への具体的な合理的配慮の方法
場面緘黙のある子どもへの合理的配慮として、まず発声の困難さに対する配慮では、無理に声を出させるような働きかけはせず、意思表示カードを活用するなどコミュニケーションの代替手段を習得するための支援を行います。
コミュニケーション方法に関する配慮として、話す以外に書くことや手話、ジェスチャー、パソコンやタブレット型端末を利用する等の方法を伝えます。やり取りはテキストやチャット、メール、筆談にしてもらうなどの工夫が効果的です。
歌や音読を評価する場面では、筆記や指さしでの実施、クラスメイトの注目が少ない立ち位置での実施、複数人同時での実施、別室でのテスト、家庭での録音や録画利用などを検討します。
自己理解を深める配慮として、場面緘黙について取り扱った本を紹介し、場面緘黙とはどのようなものなのかを本人自身が理解できるよう支援することも重要です。また、自分の希望の選択肢が示されている場合には手を挙げる、意にそぐわない場合には何もしないように決めて、自分の意思を示せるようにする方法もあります。
給食当番と場面緘黙症 役割調整と免除の考え方
給食当番は多くの学校で行われている当番活動の一つです。一般的な給食当番の役割としては、配膳室から給食を運ぶ、おかずやご飯を盛り付ける、牛乳やパンを配る、食器を片付ける、台拭きをする、などがあります。これらの活動の中には、声を出して行う必要があるものもあります。例えば「いただきます」「ごちそうさま」の号令、配膳時の声かけ(「おかわりある人」「もう少し減らす人」など)、順番待ちの誘導などです。
場面緘黙の子どもが感じる給食当番の困難さ
場面緘黙の子どもにとって、給食当番は非常に難しい活動となることがあります。声を出すことが求められる場面では、強い不安や緊張を感じてしまいます。また、緘動を伴う場合は、体を思うように動かせないこともあり、配膳などの動作自体が困難になることもあります。さらに、給食当番は決まった時間内に複数の子どもと協力して行う活動であるため、コミュニケーションの困難さがより顕著になりやすい場面です。
給食当番における配慮の3つの選択肢
場面緘黙の子どもへの給食当番における配慮は、「完全な免除」から「声を出さない役割への変更」まで、様々な選択肢があります。大切なのは、本人や保護者と相談しながら、その子どもに合った対応を一緒に考えることです。
完全免除という選択肢については、場面緘黙の症状が重い場合や、緘動を伴う場合、あるいは給食当番に対する不安が非常に強い場合に検討されます。ただし、完全免除には注意点もあります。他の子どもたちから「特別扱い」と見られる可能性があること、本人が「自分だけできない」という劣等感を持つ可能性があること、そして参加の機会を完全になくしてしまうことで、将来的なチャレンジの機会も失われる可能性があることです。
役割の調整・変更という方法は、より多くの場合に有効です。具体的には、声を出す必要のない役割(食器運び、台拭き、片付けなど)を担当する、一人で行える作業を担当する、信頼できる友達とペアで活動する、といった調整が考えられます。このような役割調整により、給食当番という活動に参加しながらも、声を出すことへの不安を軽減することができます。
段階的なアプローチも効果的な方法です。場面緘黙の治療では「スモールステップ」という考え方が重要視されています。給食当番においても同様で、最初は負担の少ない役割から始め、徐々に活動範囲を広げていくという方法があります。例えば、最初は教室内での片付けのみを担当し、次第に配膳室への移動を伴う役割、そして場合によっては声を使わないジェスチャーでの合図へと段階を上げていくことができます。このようなアプローチでは、成功体験を積み重ねることで、少しずつ自信をつけていくことができます。
保護者から学校への配慮依頼 効果的な伝え方のポイント
場面緘黙の子どもへの支援には、家庭と学校の連携が欠かせません。保護者が学校に配慮を依頼する際は、いくつかのポイントを押さえておくことが重要です。まず、場面緘黙という症状について正しく理解してもらうことが第一歩です。かんもくネットなどの団体が作成しているリーフレットを活用することで、症状についての説明がスムーズになります。
配慮依頼の手紙を書く際の4つのポイント
学校への配慮依頼を文書で行う場合、一つ目は、忙しい担任の先生の負担を考慮し、内容をシンプルにまとめることです。長すぎる文書は読んでもらえない可能性があります。
二つ目は、子どもの苦手なことと得意なことをセットで伝えることです。苦手なことだけでなく、得意なことや好きなことも伝えることで、先生が子どもの全体像を把握しやすくなります。
三つ目は、保護者も協力する姿勢を示すことです。「学校にお任せ」という態度ではなく、家庭でもサポートしていく意志を伝えることで、より良い連携が生まれます。
四つ目は、担任への感謝を伝えることです。日頃の指導への感謝を述べることで、より協力的な関係を築くことができます。
給食当番に関する具体的な配慮依頼の内容
給食当番に関する配慮依頼として、場面緘黙について簡潔に説明した上で、「給食当番の際、声を出す役割を担当することが難しい」という状況を伝えます。そして、「食器運びや台拭きなど、声を出さなくても行える役割を担当させていただけないか」という具体的な提案を行います。
また、「本人の状態を見ながら、徐々にできることを増やしていきたいと考えている」という将来的な見通しも共有することで、免除や配慮が永続的なものではないことを伝えることができます。
個別の教育支援計画の活用が重要な理由
家庭側と学校側で合意した合理的配慮の内容については、個別の教育支援計画などの文書に明記しておくことをお勧めします。そうすることで、何か困りごとが起こった際にお互いに確認や見直しがしやすく、次年度以降への引き継ぎもスムーズになります。担任が変わった際に配慮が引き継がれないという問題を防ぐためにも、文書化は非常に重要です。
教員向け 場面緘黙の子どもへの適切な接し方
場面緘黙の子どもへの対応で避けるべきことがあります。「言ってみてごらん」「小さな声でいいから」など、話し出すのを待つことは、注目を必要以上に集め、心理的な負担を大きくします。また、「どうせできないから順番を飛ばしてあげよう」などと勝手に判断して順番を飛ばすこともよくありません。本人の意思を確認せずに対応を決めてしまうことは、子どもの自己決定の機会を奪ってしまいます。
推奨される対応方法
大切なのは、コミュニケーションを取ることです。指さしや筆談を積極的に利用してください。音声以外の手段ができるなら、それを活用しましょう。周囲の大人が、子どもができそうな選択肢を提案し、子ども自身が選んでチャレンジする方法がお勧めです。本人が自分で選択したり、決断したりできるよう、本人の意思表示を最大限に尊重し、自己選択と自己決定ができるような支援が必要です。
席やグループ決めにおける配慮
席決めでは、学校でも話ができる友達がいる場合、その子が席の前後左右に来るように配置することで、困ったときに相談できるという安心感を持てます。グループ決めの際も配慮が必要です。「好きな子と4人グループを作ってください」という方法では、場面緘黙の子どもにとって「ひとりになったらどうしよう」という不安を感じることがあります。
安全基地の提供とクラスメイトへの理解促進
学校の中に、子どもが安心して過ごせる場所や人を確保することも重要です。保健室、相談室、図書室、あるいは信頼できる先生のいる場所など、子どもが「ここなら大丈夫」と思える場所や人がいることが、学校生活全体への安心感につながります。
場面緘黙の子どもが安心して学校生活を送るためには、クラスメイトの理解も重要です。本人は「話したくても話せない」のであり、自分の意思で声を出さないわけではないことを、クラスの子どもたちにも理解してもらう必要があります。ただし、本人の同意なく「この子は場面緘黙です」と公表することは避けるべきです。本人や保護者と相談しながら、どのように伝えるか、あるいは伝えないかを決めることが大切です。
給食に関するその他の配慮 会食恐怖症と感覚過敏
場面緘黙の子どもの中には、給食を食べること自体に困難を感じる子もいます。これは「会食恐怖症」と呼ばれる症状と関連していることがあります。会食恐怖症は「他人と食事をすることができない病気」で、不安障害の一つです。症状として、吐き気、めまい、胃痛、動悸、嚥下障害(食べ物が飲み込めない)、口の乾き、体の震え、発汗、緘黙(黙り込んでしまう)などがあります。
発達障害の子どもの「給食が食べられない」「給食が嫌い」という問題には感覚過敏が関係していることもあり、偏食は本人の努力でどうにかなるものではありません。
給食に困難を感じている子どもへの対応として、「教室ではなく別室だったら食べられそうか」「給食ではなくお弁当だったら食べられそうか」「盛り付けの量を減らすことができるか」などを確認することが大切です。担任の先生に相談すると、盛り付けの量を減らしてくれたり、同じように給食が苦手な子同士で班を作って安心して食べられる環境を作ってくれたりするなどの配慮をしてくれることが多いです。食べられなくなっている子が食べられるようになるためには「安心感」が何よりも大切です。
二次障害の予防 早期対応の重要性
場面緘黙は、適切な支援なく学校生活を過ごした場合、長期にわたるストレス状況から、うつ的症状や不登校などの二次的な問題へとつながるケースがあります。幼少期に発症した緘黙症に対して適切な支援が受けられずに大人になった場合、症状の改善が遅くなるだけではなく、うつ病や不安障害などの他の精神障害や、不登校や引きこもりなどの二次的な問題を生じやすくなります。
場面緘黙症は、子どもに発症することや周囲の理解を求めにくいことから、二次障害のリスクが非常に高い症状です。年齢を重ねるにつれて、話せないことが原因で理不尽な扱いを受けたり、子ども自身に劣等感を生じたりすることも少なくありません。
予防のための支援とスピード感の大切さ
場面緘黙の二次障害を予防するためには、早期発見・早期支援が最も重要です。「様子を見る」という対応は、結果的に症状を長引かせ、二次障害のリスクを高めてしまう可能性があります。教員は気付いても、何か支援をして失敗するよりも、様子を見るという選択を取りがちですが、そっとしているうちに1年が経ってしまいます。場面緘黙への対応はスピード感が大事です。周囲の理解と適切な環境調整、そして無理をさせないスモールステップでの支援が、二次障害予防の鍵となります。
治療とサポート 専門家への相談先
場面緘黙の代表的な治療方法としては、認知行動療法などの精神療法、言語聴覚士によるサポート、薬物療法があります。行動療法では、円滑な発話やコミュニケーションができる場所・状況を段階的に広げていき、成功体験の積み重ねを目指します。「系統的脱感作法」という、徐々に不安に慣らしていく方法が用いられることもあります。
場面緘黙そのものを治療する薬は存在しませんが、不安症や自閉スペクトラム症の易刺激性を併発している場合には、それらの症状を緩和するための薬物療法を併用することがあります。治療的介入の際には、「自発的に話せるようになる」ことを目的とするのではなく、その背景にある「不安」にうまく対応できるスキルを身につけさせることが、場面緘黙の改善に有効であると考えられています。
相談できる機関について
場面緘黙の相談先として、学校では、担任の先生、スクールカウンセラー、養護教諭(保健室の先生)、特別支援教育コーディネーターなどに相談できます。医療機関では、小児科、児童精神科、心療内科などで診察を受けることができます。地域の相談機関としては、教育相談センター、発達支援センター、保健センターなどがあります。また、かんもくネットなどの当事者・保護者支援団体も、情報提供や相談の場を提供しています。
スモールステップ支援の実践 成功体験を積み重ねる方法
場面緘黙の支援でよく用いられる「スモールステップ」とは、発話を促すために段階的な手順を踏んでいくことをいいます。これには行動療法の考え方が背景にあります。スモールステップは、最初は簡単なチャレンジから始め、それをクリアした経験を段階的に積んでいくことで自信をつけ、徐々にできることの幅を増やしていくという考え方です。この実践は「段階的エクスポージャー法」という行動療法や認知行動療法がよく用いられます。
スモールステップ実践の具体的なポイント
スモールステップを行う際に最も重要なのは、安心できる環境づくりです。家庭が安心できる環境であることはもちろん、「安心して失敗でき、リカバリー体験を積める環境」であることが大切です。子どもにあった環境が整い、子どもが新しいことに挑戦する準備が整ってから行いましょう。
具体的な方法としては、親しい人との間で声を出す練習、先生に録音した声を聞かせる、先生に小さな声で挨拶してみる、といったように、本人が「できた」と達成感を得られる小さな目標を段階的に設定し、自信を育てていきます。
ある保護者の方はスモールステップを実践し、学校に通って教室の中で会話することから始めました。緊張して最初はなかなかうまくいかなかったものの、ある日声を出すことができ、それが9年ぶりに学校で声を出せた瞬間となりました。このように、焦らず着実にステップを踏むことで、大きな変化が生まれることがあります。
「話せない」状態を無理強いしたり、責めたりすることは逆効果です。焦らず、本人のペースに合わせて、安心できる環境を整えることが回復への鍵となります。成功体験の積み重ね、安心できる人間関係の構築、適切な治療とサポートの継続が重要です。
当番活動と係活動の違いを理解する
学校には「当番活動」と「係活動」の2種類の活動があります。この違いを理解することは、場面緘黙の子どもへの配慮を考える上でも重要です。
当番活動は、日直、給食当番、掃除当番など、学校生活の中でなくてはならない仕事です。学級のみんなで役割分担をしながら、順番に経験できるようにします。当番活動を通して、学級の一員として自分の役割に責任を持つことの大切さを学びます。
一方、係活動は、学級のみんなで協力し、学級をよりよくしたり、より楽しくしたりするために行う活動です。当番活動とは違い、係活動は学校生活の中でなくても困らないものです。「クラスをもっとよくしたい」「クラスをもっと楽しくしたい」という子どもたちの思いのもと、子どもたち自身で創意工夫できる内容にすることが大切です。
場面緘黙の子どもにとっての当番活動の意味
場面緘黙の子どもにとって、当番活動への参加は「学級の一員である」という帰属意識を高める重要な機会でもあります。完全に免除してしまうと、その機会を失ってしまう可能性があります。そのため、可能であれば何らかの形で参加できるよう、役割の調整を検討することが望ましいでしょう。声を出さなくてもできる役割、一人で黙々とできる作業、信頼できる友達とペアで行う活動など、その子どもに合った参加の仕方を見つけることが大切です。
掃除当番においても同様の配慮が可能です。掃除場所を細かく分担することで、自分の担当する場所が明確になり、子どもはその場所に対して責任を持って取り組むことができます。例えば「教室・窓側ほうき」「教室・廊下側ほうき」のように分けることで、声でのやり取りが少なくても自分の役割を果たすことができます。
学校行事への参加と配慮
場面緘黙の子どもにとって、運動会や学習発表会などの学校行事への参加は大きなチャレンジとなります。何とか参加できているものの、本人のストレスは大きいということが多いです。特に、セリフを言う場面や、歌を歌う場面、大勢の前で発表する場面などは、強い不安や緊張を引き起こす可能性があります。
学校行事における配慮としては、発表会や学芸会では、セリフのない役や、動きだけの役、裏方の仕事などを担当する選択肢を用意することができます。また、複数人で同時に声を出す場面(合唱など)では参加しやすい場合もあります。運動会では、競技自体に問題がない場合が多いですが、応援合戦での声出しや、選手宣誓などの役割については配慮が必要です。行事の練習段階から本人の様子を観察し、負担が大きすぎる場合は参加方法の調整を検討することが重要です。
学校行事への参加においても、最も大切なのは本人の意思を尊重することです。「参加したいけれど、声を出す場面が不安」という場合と、「行事自体に参加することがつらい」という場合では、対応が異なります。本人や保護者と丁寧にコミュニケーションを取り、どのような形であれば参加できそうか、あるいは今回は見学という形が良いのか、一緒に考えていくことが大切です。
家庭でできるサポート
場面緘黙の子どもにとって、家庭は「安心して話せる場所」です。この安心感を大切にしながら、学校との橋渡し役として家庭ができることがあります。まず、子どもの話をよく聞くことです。学校での出来事、困っていること、嬉しかったことなど、子どもが話したいときに話せる環境を作りましょう。「学校で話せた」「今日は○○ができた」という小さな成功体験を一緒に喜ぶことで、子どもの自信につながります。
学校との連携において、家庭は重要な役割を果たします。連絡帳や面談を通じて、子どもの様子を先生と共有しましょう。家庭での様子と学校での様子は異なることが多いため、双方の情報を共有することで、より適切な支援につなげることができます。また、学校から帰ってきた子どもの様子を観察し、疲れが見える場合は休息を優先するなど、家庭でのケアも大切です。
家庭でできる最も重要なことの一つは、「無理をさせない」ということです。「学校で話せるようになってほしい」という気持ちは自然なものですが、プレッシャーをかけすぎると逆効果になることがあります。子どものペースを尊重し、焦らずに見守ることが大切です。「話せなくても大丈夫」「あなたはあなたのままでいい」というメッセージを伝え続けることで、子どもは安心感を得ることができます。
よくある質問と回答
場面緘黙は治るのでしょうか。場面緘黙は、適切な支援と環境調整により、改善することができます。研究者の高木潤野氏は「どのような状況だったとしても、場面緘黙は早期に発見し、正しいアセスメントをすれば治せるもの」と述べています。ただし、「治る」の定義は人によって異なります。学校で普通に話せるようになることを目標にする場合もあれば、声を出さなくても自分らしく過ごせることを目標にする場合もあります。大切なのは、本人が「困らない」状態、「その人らしさを発揮できる」状態を目指すことです。
いつ専門家に相談すべきでしょうか。場面緘黙の症状に気づいたら、できるだけ早く専門家に相談することをお勧めします。「様子を見る」期間が長くなると、症状が固定化したり、二次障害のリスクが高まったりする可能性があります。特に、症状が1ヶ月以上続いている場合、学校生活に支障が出ている場合、子どもが苦しんでいる様子がある場合は、早めに相談しましょう。
クラスメイトにどう説明すればいいでしょうか。クラスメイトへの説明は、必ず本人と保護者の同意を得てから行いましょう。本人が望まない場合は、説明しないという選択もあります。説明する場合は、「話したくても話せないことがある」「でも、筆談やジェスチャーでコミュニケーションはできる」といった形で、シンプルに伝えることが多いです。具体的な説明方法は、本人・保護者・担任で相談して決めることが大切です。
まとめ その子らしさを発揮できる環境づくりを
場面緘黙症の子どもにとって、給食当番をはじめとする学校での役割活動は大きなチャレンジとなることがあります。しかし、適切な配慮と支援があれば、子どもは安心して学校生活を送ることができます。
大切なのは、「話せないこと」を問題視するのではなく、その子どもが「どうすれば参加できるか」「どうすれば力を発揮できるか」という視点で考えることです。完全な免除だけが解決策ではありません。役割の調整、コミュニケーション手段の工夫、段階的なアプローチなど、その子どもに合った方法を、本人・保護者・学校が一緒に考えていくことが重要です。
場面緘黙改善のゴールは「その人らしさを発揮できるようになること」です。学校を「子どもの力が発揮できる場所」に変えられるのは、周囲の大人たちです。一人ひとりの子どもに寄り添った支援を心がけていきましょう。

コメント